うまいものは体によくないなあ

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 以前、あまりのおいしさに衝撃を受けた「花巻そば」を確かめに、鹿角市のそば屋に向かった。

 ご存じかと思うが、花巻そばとは、かけそばに焼きのりをのせたもので、のりを「磯の華」に例えた江戸時代から続くそばのレシピの一つだ。のりは、ちぎっても板のままでも提供する店によっていろいろある。通常、別皿でワサビが添えられる。そばとつゆがおいしいのはもちろんだが、のりしかのっていないので、そののりが良くないとどうしようもないそばだ。

 果たして……。間違いなくうまいのであった。「確かめに」などとおこがましいことであった。

 お土産に天かすをいただいた。それと刻んだネギとごはんをざっくり混ぜてそばつゆで味をつければ「悪魔のおにぎり」が出来上がる。なぜ悪魔かと言えば、食べ過ぎるからである。

 たぬきそばやうどんも同様。天かすがつゆと一体化して、とろりとしたあんのようになり、一滴残らず胃の中に流れ込む。うまいものは体によくないなあ。

(朝日新聞秋田版 2026年4月24日掲載)

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ただぼんやり 癒やしのランチ

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 夫婦2人で休日のランチにでかけた。昭和のころの住宅そのままのカフェで、床の間のある畳敷きの居間でプレートランチをいただいた。季節の野菜や山菜がたっぷり使われた8種類の料理と座卓から眺める景色は、私の体と心をきれいにしてくれたように感じた。

 間口の広い玄関の真正面にある居間の建具は、漆塗りだったり、型板ガラスや富士山の風景のすりガラスが使われていたりして味がある。玄関の薪(まき)ストーブの熱が、建物全体を暖かく包み込む。なぜかはわからないが、時間がとけてなくなっていくようで、ただただぼんやりできる空気感があり、やさしさと豊かさが体に染み込んでくる。

 ここのところ、色々忙しくてずーっとくさくさしていて(仕事があることはとても良いことだけども)、体のあちこちに痛みを感じるほどだったのだが、食後のコーヒーをすすりながら店主たちと談笑しているころには、すっかり気分がよくなっていた。癒やしのランチ、ごちそうさまでした。

(朝日新聞秋田版 2026年3月27日掲載)

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盛岡の飲食店、どこも「当たり」

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 連休を使って、久しぶりに夫婦で盛岡市まで出かけてきた。

 秋田で上映されない映画をみることと、いくつかのお目当ての店をのぞいてみること、そして何かしらうまいものを食べることが目的である。

 映画はやはりスクリーンでみなければと改めて思わされたし(出来ればデジタルではなくフィルムが良い。黒の表現が違うのだ)、店では想定以上のイイ買い物が出来た。

 ウチの近所で休日に外食しようとすると、選択肢が限られる印象なのだが、盛岡市だと映画館や店から歩いて10分ほどの範囲でも、選べないくらい多くの飲食店が開いている。

 しかし気になる店は予約が必要なところが多く、今回は飛び込みで入れる店を選んだのだが、結果的にどの店も「当たり」で、しっかり食べ過ぎてしまった。野球帽をかぶって、Tシャツに金のネックレス、そして金髪というスタッフが供する十割蕎麦(そば)のうまさには脱帽した。次回が楽しみになった旅であった。旅先での食べ物は大変重要である。

(朝日新聞秋田版 2026年2月27日掲載)

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あーまん4周年 お付き合い

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  新年を迎えてから、早くもひと月が過ぎようとしている。もう? 早すぎやしないか?

 そう言えば、このあいだの朝、まばたきしたと思ったら1時間が過ぎていたことがあった。時間が盗まれているんじゃないか?

 すみません、ただの二度寝です。わかってます。バタバタした年末だったし、新年早々、例年になく忙しくしていたもので、お正月の、あの、少しのんびりした感じというものを味わっていないのだ。

 そのせいなのか、「新しい年」という実感が薄い。2月を目の前にして言うことではないかもしれないけど。2月といえば、1日の日曜日に秋田拠点センター「アルヴェ」にて、秋田県非公認ヒーロー「あーまん」の活動開始4周年を記念したイベントが開催される。

 私は昨年、番組の企画で対面して以来お付き合いさせてもらっているのだが、その記念ステージに登壇することになっているのだ。普段やらないことなので、色々と勉強させてもらえると思っている。楽しみだー。

(朝日新聞秋田版 2026年1月30日掲載)

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てんてこ舞い スタンプ作り

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 明日27日(土)は年内最後の「サタナビっ!」の生放送であります。お楽しみに!

 ところで、私は番組に出演する一方でハンコ屋を経営しているのだけれど、今日と明日は初めてのイベント出店の真っ最中のはずである。番組のテーマ曲を歌う高橋優さんのミルハスでのライブに合わせて開催される秋田市文化創造館での記念催事に参加するのだ。

 この原稿を書いている時点ではまだ準備が出来ていない。高橋優ファンの方々に(そうでない方にも)喜んで買ってもらえるような可愛いスタンプを深夜までコツコツと作り続けている。

 しかし、普段のハンコ屋はお客様からの注文を受けて作る仕事をしているのだ。今回のように売れるのか売れないのかわからない小さなものを大量に作る仕組みを持っていなかったので、もうてんてこ舞いなのである。わからないことだらけで、不安と期待が入り交じった奇妙な気持ちを抱えた日々を送っている。今年最後の週末。楽しく乗り切りたいなあ。

(朝日新聞秋田版 2025年12月26日掲載)

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昔は人を襲わなかったのに……

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 毎日、クマのことを考えている。そうせざるを得ない。つい、誰かとクマの話題で長話になってしまう。

 子供のころからクマの話はよく聞いていた。(今住んでいる近所の話ではないが)「出た」「見た」というのは日常茶飯事で、つまりクマと人間の距離はもともと近かったのだが、当時「人が襲われた」という話は聞いたことがなかった。

 しかし、今年は状況が一変している。人間の生活圏内で、クマが人を襲っているのだ。家の敷地内に入り込み、建物に、自動ドアからも入ってくる。

 ウチから歩いて数分のところでも目撃されている。早朝や夕方以降は、一人で外に出ることをためらってしまう(結局は出るのだが……)。

 県外の友人からも「大丈夫か」と、しょっちゅう連絡が入る。もはや一つの地域だけでなく国全体の問題になっている。石器時代に戻ってしまったかのようだ。個人的にはなすすべがないと感じている。一日も早く原因を探り、対策を立てられるようになることを願う。

(朝日新聞秋田版 2025年11月28日掲載)

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長野で頭もおなかもいっぱいに

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 久しぶりに、1人で旅行してきた。東京にいたころからの友人の舞台公演が、別の友人たちがいる長野県松本市で行われるというので、どうしても行きたくなったからだ。

 十数年ぶりの再会は、「変わらないねー」などと言い合いながらの盛会であった。まわりの人から「あんたたち仲良くなったきっかけは何?」と聞かれたが、誰もよく覚えていないのであった。

 俳優になった友人は、海外の演出家とともにヨーロッパツアーを終えてからの国内ツアーの途中で、コイツはすごい高いところまで行っちゃったなあとしみじみ思った次第。

 舞台は旧約聖書をもとにした一人芝居で、客入れからカーテンコールまで圧倒されっぱなし。まばたきも出来ないくらいで、久しぶりに本物の演劇を観(み)せられた感じがして脳みそが揺れた。

 長野はさすが蕎麦(そば)の町で、駅のホームにある立ち食い蕎麦やセルフサービスの格安の蕎麦屋まで全部うまい。しっかり食べ過ぎて、頭もおなかもいっぱいになって帰宅した。

(朝日新聞秋田版 2025年10月31日掲載)

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さらば極上のレバニラ炒め

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 秋田市八橋の中国料理店「盛(さかり)」が閉店した。42年余り、変わらぬ極上、唯一の味を私たちに届けてくれていた。日本一(個人の見解です)のニラレバ炒めがもう食べられない。旬の食材、他では滅多に出会うことのない食材を使った数々の料理ももう味わえない。

 閉店がうわさされ始めて以来、太陽が昇らないうちから行列ができるという異常事態で、唯一無二の料理を最後に味わうことはかなわなかった。そして閉店の日にせめてあいさつだけでもと思い、時間を見計らって来店したのだが、まるで営業中のように駐車場は満車。大勢の客や関係者、取材陣で店の外までにぎわっていて、県外に住む息子さんもきていた。

 店の人たちが永遠に終わらなそうな片付けに追われている中、のこのこ現れた私はただの邪魔者だったかもしれない。しかし、無事におやじさんにあいさつはできた。ぶっきらぼうだけど信頼できる一流の仕事人。素晴らしい料理人の仕事を味わえなくなった私たちは泣いて過ごすしかない。

(朝日新聞秋田版 2025年9月26日掲載)

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死を感じた 西馬音内盆踊り

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 先日、十数年ぶりに羽後町の西馬音内盆踊りを見に行ってきた。盆踊りの開催期間中は、普段は昼しか営業しないそば屋が夜も営業するので、それも目的であった。関東のそばほど細くなく、つゆもまろやかでかんでおいしいそばである。

 羽後町に向かう途中、今年新しく出来たカフェに立ち寄った。コーヒーは素晴らしい味で、店内の本棚もセンスが光る。一日中そこに座ってコーヒーをすすっていたかったが、その日はそばと盆踊りが待っていたので早々に切り上げた。

 久しぶりの西馬音内はそば屋も会場も人混みが尋常ではなかった。かがり火を前にして、生と死が混在するかのようなエロチックな踊りに見とれていたら、彦三頭巾をかぶった踊り手から突然私の本名を呼ばれた。

 心臓が止まるかと思った。亡者に名前を呼ばれた? なぜ? 死に神? 俺はもうじき死ぬのか? その正体は土崎に住んでいる同級生で、もう8年も踊りに参加しているとのこと。頭巾の中からはよく見えているのね……。

(朝日新聞秋田版 2025年8月29日掲載)

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映画3本 1泊2日の旅

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 盛岡市から鹿角市を抜けて大館市へ、映画館のはしごをしてきた。盛岡で2本、大館で1本。どれも近所の映画館ではかからない作品だったし、たまたま同じ時期に上映されていたので、「ちょうどいいや」ということでカミさんと2人、1泊しながらの映画鑑賞旅行になった。

 アメリカのインディーズ「フォーチュンクッキー」、香港の民主化運動のドキュメンタリー「灰となっても」、日本の大学生の恋の物語「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」と、タイプの違う3本だったが、どれも見応えのある傑作であった。

 しかし、立て続けにみたおかげで、まるでおいしいものを腹いっぱい動けなくなるくらいまで食べて苦しむ、みたいな感じになってしまった。でも、この3本はオススメです! 機会があったらぜひご覧ください。

 実は、映画館の椅子に座りっぱなしというのは結構きつい。若いころはなんともなかったのに…、とカミさんと2人でため息をついたのであった。

(朝日新聞秋田版 2025年7月25日掲載)

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