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私の知る限り、五城目町には小倉温泉、湯の越温泉、赤倉山荘と三つの泉質の違う温泉がある。それぞれ日帰りで利用できるので、この6、7年通い続けている。
もともと、子どものアーチェリーの練習場所が五城目町にあったので、その送迎ついでというか時間潰しに「じゃあ温泉でも」という感じで毎週通うことになったのがきっかけだ。
どこも気に入っているのだけれど、最近、赤倉山荘の使い方に新発見があった。午前10時から午後3時まで客室を借りるのである。1人千数百円で温泉に入って畳の部屋でごろ寝ができ、別料金だが食事も食べられる。ちょっとした温泉旅行気分を味わえるわけなのだ。そして食事のだまこ鍋は出汁(だし)が濃密、だまこはふわふわで絶品なのだった。
はっきり言えば浴槽は小さいし、豪華な設備やサービスはないけれど、私にとってはゆっくり、ぼんやりできる空間と時間を格安で提供してもらえるありがたーい場所で、行くたびに平和な気持ちになるのだ。
(朝日新聞秋田版 2024年9月27日掲載)
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とても気になっていた映画が御成座でかかることを知り、平日にもかかわらず、カミさんに無理を言って仕事を半休し、早朝、大館に向かった(そんなことは滅多にないのである)。
ところが。いつも使う道が通行止めになっている可能性があったため、高速道路を走ると、能代市に入った辺りで前の車がハザードランプを点滅させ、停車した。対向車は普通に走っている。工事でもやっているのか、それなら仕方がないと思い、待った。
数分後、救急車がサイレンを鳴らしながら走って来た。続いて左側をパトカーが走り抜けた。事故か。車列は全く動く気配を見せない。ギアをパーキングに入れる。携帯の電波も入らず、カーナビのテレビの電波も入らない。セミと鳥の鳴き声と、遠くから聞こえるサイレンの音。もう映画は始まっている。なすすべなし。
車を動かせたのは上映開始から15分過ぎ。その時点で鑑賞は諦めて産直でスイカと野菜を買って帰った。カミさんも喜ぶ美味であった。
(朝日新聞秋田版 2024年8月30日掲載)
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今月の連休中、カミさんが7年ぶりに里帰りするのに付き合って、富山まで車で行ってきた。
元日の地震で少なからず被害を受けた地域に住む親類もいたが、みんな元気な様子で、カミさんの親兄弟とその家族、それにウチの子どもたちも山梨と埼玉からやって来て、総勢18人が集まって、ワイワイと楽しい一夜を過ごすことができた。
道中、山形では岩ガキや冷やしラーメン、メニューがコーヒーしかない喫茶店、大盛りで有名な食堂とか、新潟では美味(うま)い酒と肴(さかな)や日帰り温泉などに立ち寄り、富山では路面電車に乗ってアーケード街を散策したり、キトキト(富山弁で「新鮮」)の地魚を味わったり。往復1千キロ超の長旅を満喫した。疲れたけど。
帰りの日、私たちが車で富山県内をうろうろしている間に、子どもたちはそれぞれ山梨と埼玉の家に帰り着いていた。恐るべし、新幹線。
27日の「サタナビっ!」は正午からの放送で、土曜の朝じゃあなくて昼の番組になります。そこのところご留意されたし。
(朝日新聞秋田版 2024年7月26日掲載)
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番組の取材で以前お世話になったことのある大仙市の高梨商店。敷地内で定期的に朝市が開かれていて、カミさんが前から「行きたい」と熱望していたのだった。
我が家から車で1時間弱。腹ペコで到着した2人は、ビーフシチュー、カレー、チャイ、コロッケを平らげ、チーズケーキ、和菓子、コーヒーを追加した。
その朝市には世界各地の料理や菓子、雑貨、Tシャツプリント体験、ドリンク等々多種多様な出店があった。
特徴的だったのは子どものための遊び場が用意されていること。おかげで就学前の子連れのお客さんがいっぱい来ていて、その空間にいるだけで心が和んだ。何しろウチの周りには子どもがいる家が1世帯しかなく、気ままに遊ぶたくさんの子どもたちを目にしたのは本当に久しぶり。カミさんも言っていたが子どもが楽しそうにしているとこんなにも気分が良くなるものかと、ちょっと驚いたくらいだった。
素敵な場をつくり上げている人たちに感謝。
(朝日新聞秋田版 2024年6月29日掲載)
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みなさんは「アカネ」という植物を見たことがあるだろうか。私は先日、番組の取材で訪れた鹿角高校で鹿角茜(あかね)染伝承隊の生徒たちと、高校の敷地内に自生しているアカネを「収穫」し、その姿を初めて目にした。
十文字に生えている先のとがった葉が妙に可愛い。きれいに放射状に伸びた葉が他の草花とは明らかに違う。可愛い。
その根を使った草木染が茜染で、鹿角では奈良時代から伝わり、一度は途絶えたものの現在復活し、地域の高校生たちも伝承活動に一役買っているということらしい。恐ろしく手間がかかる技法だが、その色は年を重ねるごとに鮮やかになり、千年経っても色あせないという。黄色や橙(だいだい)、紫色などが入りまじる伝統的な日本の「赤」だ。
地域の伝統文化の伝承に若者たちが積極的に関わっている姿には驚くとともに強く感動したが、カエルを見て絶叫するのは勘弁してほしい。おじさんはビックリして腰を抜かすところだった。詳細は25日の番組で!
(朝日新聞秋田版 2024年5月24日掲載)
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放送が始まって21年目に突入している「サタナビっ!」ですが、今月から新しい顔ぶれと新しいスタイルで番組をお届けします。いや正確には新型コロナ拡大前の形に戻っただけなんですが。
一言でいえば、人と人の距離が近くなったのだ。4年前、このコラムで「ニンゲンがニンゲーーーンになってしまった」と書いたのだけれど、ようやく「ニンゲン」の姿に戻りつつあるわけだ。
新たな相棒の中島千歩アナウンサーは去年秋田に来たばかり。でも何度か盃(さかずき)を交わしているので気心は知れている。そもそも番組のスタート時は私を含めて新人だらけだった。
今では地元の情報番組として定着した感もあるし、周りからは人気番組として見られている節もある。安定も大事なのかもしれないが、常に新鮮な視点を持ち続けて、挑戦的な姿勢を保っておかないといけない。
そのためにも新しい人が加わるというのはもってこいなのだ。心機一転、今までと一味違う番組をお届け……できるかな?
(朝日新聞秋田版 2024年4月5日掲載)
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2月14日午後6時半から、つまり水曜の夜に「サタナビっ!」の生放送があったのですが、ご覧いただけたでしょうか? 土曜の朝の番組が水曜の夜に堂々と。しかも、秋田出身のシンガー・ソングライター高橋優書き下ろしの番組テーマソング「オープンワールド」を引っさげて。
深みのある痛烈な歌詞と自由自在なメロディーラインで、聴けば聴くほどしみてくる。秋田に住むすべての人に贈る激励の歌だ。高橋優、地元思いの素晴らしいアーティストである。今さら何を言うかって感じですかね? とにかく、みなさんにぜひ聴いていただきたい! ちなみに今のところ、番組内でしか流れませんので。
この20年、土曜の早朝に準備を始めていたのが、水曜の夕方からだったせいか、調子が変な生放送だったと、自分では思う。しかし、ありがたいことに、多くの方々に視聴していただいたようである。また多くの恥をさらしてしまったわけだ。
まあ、それはしょうがないこととして、これを契機に番組が新しい扉を開けることができるか楽しみである。そう「オープンワールド」の歌詞のように。素晴らしいかもしれない今日を始めよう――。
(朝日新聞秋田版 2024年3月1日掲載)
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今のようなシネコンがなかった若いころ、毎週のように映画館に通っていた時期があった。今でも映画館には足を運ぶけれど、その機会はめっきり減った。それでも、すべての人に見てほしいと思うような、とんでもなく素晴らしい映画に出会うことは少なくない。
カンヌ映画祭で役所広司が男優賞を受賞した「パーフェクト・デイズ」もそんな作品だ。監督はドイツ人だが、東京が舞台で日本語の映画。「余白」が多く、人によって様々な違った印象を持つ作品だと思うけれど、それでもオススメしたいと心から思うのである。
劇中で流れる1960~70年代の楽曲もかなり重要で、歌詞(英語だけども)が絶妙に場面に呼応し、驚くべき効果を見せていて、心が震え、涙腺がゆるんでしまう。しかも、私の好きな曲も多くて、「こりゃサントラ盤を買わねば!」と思ったら、発売されていないようなのだ。仕方がないので手元にない曲は買うなどして全11曲、自分で集めた。映画は2回見たが、音楽はほぼ毎日聴いている。
監督の話によると、許諾を得られず使用できなかった曲もあったらしい。それが何だったのか気になってしょうがない。
(朝日新聞秋田版 2024年1月26日掲載)
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今年ももう残りわずか。毎年のことだけど、時の流れはここからさらに速くなるように感じる。
今年は番組が放送20周年を迎えたことで、いつもとは違う記念企画があって、さらに、私の還暦祝いまでしていただいた。赤いちゃんちゃんこならぬ、赤いライダースジャケット! いわゆるサプライズというやつで、まったく知らされることなく、生放送中に突然披露された時の驚きは、自分でも笑っちゃうくらいだった。周年企画は続くので、来年も乞うご期待!
しかし、今年ほど秋田の「悪い」ニュースが全国に広がったことはないんじゃなかろうか。熊と大雨被害、それからじゃこ天。じゃこ天は人々の良心のおかげで良い方向に転換できたようだったけれど、熊と大雨被害はいまだに問題が山積している。
本格的な雪の季節に突入して、年のせいだろうか、一段と寒さに弱くなってきたようだ。体調も見事に崩す。何か体に良いこと始めないと、などと今まで一度もやったことがないことを考えてみたりもする。
今週の「サタナビっ!」が今年最後の生放送です。暖まりながらお楽しみ下さい。良いお年を!
(朝日新聞秋田版 2023年12月22日掲載)
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今年は「サタナビっ!」が放送開始20周年、私が還暦を迎え、周りから何かと区切りだとか記念だとか言われることが多い。しかし、個人的にはそういうことにあまり思うところがないので、何となく申し訳ない気持ちにさせられてしまうのが嫌である。
そんな折、親類家族が関東から5人で秋田に旅行に行くので、よかったらスタジオを見学させてほしいと言う。番組は、ギリギリのスペースとスタッフで回しているので厳しいだろうと思ったが、局には快く引き受けていただき、リハーサルから本番までたっぷり見学させていただいた。
私が座る位置からは見学している様子はほとんど見えなかったので、余計なことを意識せずにいつも通り放送を終えることができたのだが、後から聞いたところ、見学中、スタッフから随分気を使われていたらしい。優しさに感謝であります。いいスタッフが集まっているからこそ、いい番組ができるのだということを改めてかみ締めた。
当人たちは貴重な経験になったと大喜びで、私も孝行できてうれしかった。結果的には還暦とか20周年とかいう節目をしみじみ感じることになった次第。
(朝日新聞秋田版 2023年11月10日掲載)
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