なすすべなく 諦めた映画鑑賞

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 とても気になっていた映画が御成座でかかることを知り、平日にもかかわらず、カミさんに無理を言って仕事を半休し、早朝、大館に向かった(そんなことは滅多にないのである)。

 ところが。いつも使う道が通行止めになっている可能性があったため、高速道路を走ると、能代市に入った辺りで前の車がハザードランプを点滅させ、停車した。対向車は普通に走っている。工事でもやっているのか、それなら仕方がないと思い、待った。

 数分後、救急車がサイレンを鳴らしながら走って来た。続いて左側をパトカーが走り抜けた。事故か。車列は全く動く気配を見せない。ギアをパーキングに入れる。携帯の電波も入らず、カーナビのテレビの電波も入らない。セミと鳥の鳴き声と、遠くから聞こえるサイレンの音。もう映画は始まっている。なすすべなし。

 車を動かせたのは上映開始から15分過ぎ。その時点で鑑賞は諦めて産直でスイカと野菜を買って帰った。カミさんも喜ぶ美味であった。

(朝日新聞秋田版 2024年8月30日掲載)

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