クセ強温泉、気に入ったが……

ZEN

 今月、久しぶりに帰省した息子と一緒に近県へドライブに出かけた。以前から気になっていたドライブインで1時間待って昼食を取り、あちこち巡って、やはりこちらもずーっと前から気になっていた温泉に向かった。

 おそらく、以前は大繁盛していたであろう立派な外観。建物の玄関と一体化した、巨木を使った柱や梁(はり)を持つ屋根つき、門扉つきの車寄せは圧巻であった。

 しかし、である。玄関の扉を開けるとロビーらしき空間でテーブルを囲んで数人がそうめんをすすっていた。スイカも並んでいる。横を見ると柵の中に白いでかい犬が2匹、退屈そうに寝そべっている。

 「ジョリィが2匹……」

 一瞬、言葉を失った。

 「お風呂いいですか?」「ああ、日帰りは1人500円です」

 器と箸を持った中年の女性が言った。うわさ通り、強いアブラ臭を持つ癖の強い温泉で気に入った。風呂から上がると、ロビーには誰もいない。そうめんもスイカもない。あれ? さっきの人たちは? 家族で顔を見合わせたのだった。

(朝日新聞秋田版 2026年8月28日掲載)

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