あいたいAAB

ZEN

ああ、仕方ないな

「どこへ出しても恥かしい人」。秋田出身の詩人、歌手、画家、競輪解説者、など多くの肩書を持つ、友川カズキを追ったドキュメンタリー映画のタイトルである。

新型コロナの影響もあって公開が延びていたが、先月から今月7日まで、大館の御成座でもやっとこさ上映にこぎつけたようだ。知人からの情報で知った私は先月末、大館駅前にある昭和中期のまんまの雰囲気でたたずむ映画館に駆けつけた。相変わらず、切符のもぎりから上映、清掃までたった一人の映写技師がこなす様子には頭が下がる、と言うより、悲壮感すら漂う。地方の単館系の映画館は今や絶滅危惧種だ。いつ無くなってもおかしくない経済状況の中で、少数の方々の努力で踏ん張っているのだ。私たちは上映される作品を観(み)に行くしか出来ることはないので、観に行くのだ。

映画は最高に面白い。大笑いしながら、うなり、考える。友川さんのライブを観ているかのようであった。全く大衆的でなくタイトル通り世間的にはほめられた生き方ではないかもしれないが私には憧れの人である。ぜひ多くの人に観てもらいたい映画だ。

帰り道、いい気分で車を走らせていると雪にはまってしまった。なぜだか「ああ、仕方ないな」と思った。

(朝日新聞秋田版 2021年02月06日掲載)

ZEN

次に備え学ぼう

まさに未曽有の1年が過ぎようとしている。今年はどんな風に歴史に刻まれるのだろう。いや、この事態は年内には終わらない。こんな受け入れがたい状況があと1年か2年続くとしたらそれはどんな世界を生み出すのだろう?

感染症の蔓延(まんえん)は歴史上何度も繰り返されてきた。記録が残る以前にも繰り返し起きていたはずだ。現代のような対処方法もなく、何が起きているのかも理解できず、訳のわからないまま仲間たちが倒れていくその様を、ただ受け入れるしかない。恐怖の時間を過ごしていたんじゃないだろうか。それでも人類は生き延びた。我々はその子孫なわけだ。しかしながら、戦うための多くの武器を持っていたはずなのに、百年前とたいして変わらないことしか出来ずに右往左往するばかりだったようにも感じるが。私たちはどんな社会に生きていたのか、ちゃんとわかっていなかったのだ。これを機会に学ばなきゃ。次に備えるためにも。

それでも変わらない日常もあった。笑えることも楽しいことも。状況に対処し、工夫し、新しいカタチも生まれている。きょうは、「サタナビっ!」も年末スペシャルで夕方ニュースの「トレタテ!」と合同で秋田の1年を振り返る4時間半の生放送。とにかく少しでも楽しい年末を過ごしていただければ。

(朝日新聞秋田版 2020年12月26日掲載)

ZEN

生が一番なのに…

この十数年、安定した落語人気が続いているように思う。基本的に落語家は東京と大阪にしかいないので、地方だと高座に出掛ける機会がなかなかないわけだが、人が集まるとなるとおのずと地方公演も増え、最近は秋田でも平均すれば月に1回くらいは県内のどこかで落語が生で聴けるような状況になっていた。落語好きとしてはうれしい限りである。(新型コロナ以前、昨年までの話だが)

落語の音源はたくさん持っているし、昭和の名人の芸は何度聴いても飽きない。とうの昔に亡くなっているので録音されたもので聴くしかない。やはり、落語は会場に出掛けていって生で聴くのが一番だ。まあ、映画でもスポーツでも音楽でも同じことだけど。

テレビで人気があるのではなく東京などで高座のチケットが即完売するような実力派の真打ちや二つ目の落語家も秋田に来る。そんななかで、共通の友人のおかげで懇意になった真打ちがいるのだが、その人がこの秋、東京で演劇の舞台に立つ。舞台出演自体は珍しくはないが、今回に限って2年くらい前から言われていて、必ず観に行くと約束していた。しかし、客席数が減らされ、家族からも上京を心配され、行くかどうかちゅうちょしている間にさっさとチケットが完売してしまった。新型コロナめ――。

(朝日新聞秋田版 2020年11月28日掲載)

ZEN

「腑に落ちる」行動

秋が深まり、風がずいぶん冷たくなってくるなか、世の中は人のグローバルな往来を従来通りに戻していく方向にかじを切ったようだ。人々の接触機会が増えれば様々な対策を施しても、新型コロナに感染する機会も増えることになる。だから、当然そのリスクを前提にした動きであるはずだが。

感染によって数多くの命が失われている一方、ウイルス対策によって、あるいはウイルス騒動で生じた人々のいびつな行動で損なわれたものも多くあるのではないかと思う。知人たちの話を聞く限り、これは都市部より地方の方が圧倒的に問題が大きいようだ。個人的には、感染症そのものより、それに対する人間の行動の方が問題だと感じる。多くのSF作品で書かれてきた監視社会が有形無形問わずまさに現実となっている。「未来のことを本気で危惧(きぐ)しているのはSF作家だけだ」という言葉を聞いたことがあるが、案外的外れではなかったと実感する。

それにしても、私には腑(ふ)に落ちないというか何か釈然としないもやもやした気持ちがある。このウイルスとはいや応なく付き合っていかなければならない。なので!感染に気をつけながら、なるべく今まで通り、控えめに、出かけることにしようと思う。「腑に落ちる」行動をしておきたいのだ。とりあえず。

(朝日新聞秋田版 2020年10月24日掲載)

ZEN

柳葉さんの秋田愛

今週のサタナビっ!は休みで、3時間半の特番「秋田を応援!あしたへスイッチ!スペシャル」が放送される。その番組で、私が酒を飲んでクダを巻くという恒例企画「一合一笑」が放送されるが、今回初のゲストをお招きした。俳優の柳葉敏郎さんだ。よく通っているという地元の温泉施設ユメリアの一室で撮影し、終始柳葉さんのホームゲームのような様相で進んだ。気さくでいい人だと聞いてはいたが、演じる役のせいもあって物静かで言葉数も少なめ、経験が豊かで意志が強い、言わば船の錨(いかり)のようなイメージを私はひそかに持っていたのだ。

しかし。酒を飲みながらという雰囲気も手伝ってか、最初から最後まで抱腹絶倒、笑いっぱなしの収録。私自身の柳葉さんのイメージは完全崩壊。気さくどころの話ではない。初対面の時の会話を見逃さないでいただきたい。ただのおやじギャグ……。

あんまり面白すぎて話の細かい内容は覚えていない。だから私自身、放送が楽しみである。みなさんもぜひ番組をご覧になって、日本を代表する俳優が秋田を愛し住み続けているのだということを改めて知って欲しい。それと私は今回、愛することと愛されること、二つが同時にあって幸せなのだという当たり前のことを確信したのだ、爆笑しながらも。

(朝日新聞秋田版 2020年09月26日掲載)

TOPへ戻る