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藤盛 由果

宝塚合格 彼女の初舞台に涙

兵庫県宝塚市に行ってきました。コロナ禍以降、久しぶりの県外。飛行機に乗るのも小豆色の阪急電車に乗るのも、流暢な関西弁のやり取りを聞くのも・・・・・・。何もかもが新鮮に感じられ、マスクの下は常にニヤニヤ。ある意味、マスクがあって良かったのかもしれません。写真の通り、手塚治虫記念館の観光など楽しみましたが、一番の目的は宝塚の舞台を見ること。

2年前の春、宝塚音楽学校の入学試験に合格した一人の女の子を取材させていただきました。宝塚に入りたいと思ってから約半年での受験、そして合格。大好きな芸事を学べるので今は楽しみしかない!と、はじけるような笑顔でインタビューに答えてくれました。今回、そんな彼女の初舞台を幸運にも観劇することができたんです。

上演中、私の涙腺は緩みっぱなし。どんなにハンカチで抑えてもマスクまでぬれてしまうほど。涙のせいで、視界は常にピントが合っていない状態でしたが、彼女が2年前のインタビュー時以上の笑顔で舞台に立っていたことだけは、ハッキリと伝わってきました。

それにしても、自分でも驚くほどの涙の量・・・・・・。いい涙活になりました。

(朝日新聞秋田版 2022年07月01日掲載)

藤盛 由果

長編小説に挑戦 きっかけは…

十数年ぶりに長編小説を読んでいる。小学生の頃、クラスの大半が読んでいた「ハリー・ポッター」を15ページで読むのをやめてしまってから、私は本を読むのが苦手なのだと自覚している。そんな私が今せっせと読むのが、浅田次郎著の長編小説「蒼穹の昴」だ。約400ページの文庫本4冊。苦手な割にボリューミーなところに手を出したものだと、自分でも驚いている。

きっかけは、今年の秋に「蒼穹の昴」を宝塚が舞台化するというニュースだった。四半世紀にわたって宝塚ファンの私。宝塚が絡めば苦手なことも出来てしまう。歴史は苦手だったが、何度も舞台化されている戦国時代やフランス革命にはとことん強い。今回もその理論で長編に挑戦した。

読み始めて1カ月、ようやく3冊目に突入した。読み始めは数ページで本を閉じたくなるが、波にのるとグングン読み進められる。誰がどの役を演じるか予想と妄想をしながら読むのが今の楽しみだ。

ここまで予習が出来ているのだから、実際の舞台を生で観たい。舞台の初日まで半年弱。それまでに、自由に東京や兵庫に舞台を見に行けるご時世になっているだろうか……。

(朝日新聞秋田版 2022年04月22日掲載)

藤盛 由果

「ハイホー」 実家で雪かき

2年連続、雪が多い。むしろ、昨年度よりも多く感じる。私の家の玄関前には階段が2段だけあるのだが、いつの間にか雪に埋まり、スロープのようになっている。つるっつるの、なんとも体に優しくないスロープだ。

実家の大館に帰っても、もちろん私は雪かき要員だ。7種類の道具を駆使して雪かきをするのだが、固まった雪や氷を細かく砕く”つるはし”は私の担当と決まっている。ちなみに、我が家ではつるはしを「ハイホー」と呼んでいる。勘の良い方はお気づきかもしれないが、ディズニー映画「白雪姫」で、七人の小人がつるはしを使って宝石を掘る時に「ハイホーハイホー」と歌っていることに由来している。

雪かきしてくる、と言うよりも、ハイホーしてくると言った方が何となく楽しい雰囲気もある(と私は思っている)。いくら掘っても宝石は出てこないが、氷がパーンときれいに割れた時は快感だ。

やってもやっても雪かきは終わらないし、早朝に出かける時はもも上げをしているようだし、大変なことが多い雪国の冬。しかし悪いことばかりではない。車を出せずに困っている人を見つけると自然と人が集まってきたり。ご近所さんで、年配の方の家の前を雪かきしたり。秋田の冬は、とっても寒いが、とってもあったかいのだ。

(朝日新聞秋田版 2022年01月22日掲載)

藤盛 由果

子ども黙らす「蟲の呼吸」

9月に入った頃からまた「ナントカの呼吸!ほにゃららの型!」と耳にする機会が増えた。鬼と化した妹を人間に戻すべく、主人公が仲間たちと共に戦う姿が描かれた漫画の影響・・・・・・。その大きさを、私はじかに感じることとなる。

それは、友人とその子どもたちと一緒にランチに行った時のこと。子どもは6歳と4歳、やんちゃ盛りで一時も黙ってはいない。貸し切りスペースのため他のお客さんを気にする必要は無かったが、友人の話し声が聞こえないのはさすがに困る。私が「静かにしようね」と言いかけた時、友人に止められた。「もうちょっとだから」と。

もうちょっと?不思議に思っていると、お兄ちゃんが友人を見た。友人はにっこりとほほえむ。すると、数秒前まで騒いでいたのがうそのように、自分の席に静かに座った。すかさず友人は次の手を打つ。「静かにいられるのはお兄ちゃんだけか。出来ると思ったけど4歳には難しいか」。この言葉に、「出来るし!」と強く言い返すと、弟くんも自分の席へと戻った。

驚く私に、お兄ちゃんが言った。母ちゃんは、にっこり笑った時が怖いんだと。「蟲(むし)の呼吸が使えるようになった」と友人。ほほえみをたたえながら鬼を退治するあのキャラクターか・・・・・・。私もその技を習得すべく、漫画を読み返そうと思う、読書の秋。

(朝日新聞秋田版 2021年10月09日掲載)

藤盛 由果

恩師と再会 また頑張ろう

先日、学生時代のバレエの恩師に十数年ぶりに会った。先生は今も県内のバレエ教室で指導されていて、ダンサーらしいスラリと伸びた手足と、優しい口調は当時のまま。一方の私は、踊る機会もめっきり減り、現役時代からは横に一回り大きくなった。変わらない先生を前に、見ないふりをしていた自分の変わり様にちょっぴりショックを受けていた。

そんな中、「ゆうちゃん、変わらないねぇ」と先生が一言。いやいや、あの頃のように足も上がらないし、ジャンプも高く飛べないのに。どこがですかという私の視線を感じたのか、「すぐに”頑張ります”って言うところ、昔のままだよ」と付け加えてくれた。

「頑張る」という言葉には、具体性がない、余裕のなさの表れなど、時に否定的な意見もある。でも、「出来ます」と言えるほどの自信もないし、「出来ません」と投げ捨てたくもない私には、「頑張ります」が自分に適度なプレッシャーを与えてくれるおまじないなのだ。

思い返せば当時の私は、バレエがうまくなりたくて、夢をかなえたくて、必死に頑張っていた。頑張ることが当たり前だった。そんな頃の私を知っている先生に、社会人になった今も変わらないと言ってもらえたことが、とてもうれしかった。また頑張ろう、そう思えた。

(朝日新聞秋田版 2021年07月03日掲載)

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