あいたいAAB

ZEN

音楽でよみがえる記憶

秋田市内に雪がほとんどない。こんな冬はちょっと記憶にないが、道路は大変走りやすいので、遠方までドライブをしてきた。私のポンコツ車には、これまた古い音楽プレーヤーがつなぎっぱなしにしてあって、数千曲かけ放題。それには「シャッフル」という楽しい機能があり、設定しておくと誰かが手当たり次第にCDをかけ替えているかのように、アルバムや曲ごとに再生してくれるのだ。たまには気分じゃない曲がかかることもあるが、大抵の場合は偶然の出会いを楽しむ。若い頃、アメリカに滞在した時に持っていった数枚のアルバムも入っている。もっとも、当時はカセットテープだったけれど。

そのアルバムの曲が流れた時、突然その頃のことがよみがえってきた。お世辞にもきれいとは言えないベッドカバー、サイドテーブルの上の散らかった様子、薄汚れた壁、その部屋の匂いすら感じるほど鮮明に頭の中に浮かんできたのだ。「こりゃすげぇ!」。車のハンドルを握りながら、思わず声に出た。

思い出したこと自体にひどく驚いた。記憶とはこんなにも音と結びついているのか! 何でもかんでも忘れっぽくなっているこのごろ、大した理由はないにせよ、何かを思い出すっていうのは「イイこと」のように思えたのだが……、年を感じた如月。

(朝日新聞秋田版 2020年02月26日掲載)

TOPへ戻る

error: Content is protected !!