あいたいAAB

新岡 智昭

球児に心から敬意

能天気な夏空に虚無感を覚える。目には見えざる敵によって、目に映る多くのものを失った。大切な思い出、受け継いできた伝統。高校野球も例外ではなく、憧れの聖地は見果てぬ夢に終わった。

アナウンサーとしてスポーツに携わり5年目(写真は初めて実況を担当した高校相撲の全国大会の時に撮影。手前が筆者)。2020県高校野球大会では3試合、放送席に座った。選手の一挙一動を伝えることはいつもと変わらないし、目の前で繰り広げられるのは紛れもない真剣勝負。だが、敗者の涙しかり勝者の笑顔もしかり、その背景がいつもと違うことは想像に難くない。当事者でもない我々が、何か言葉を掛けることもはばかられる気がして複雑な思いだった。

金足農業高校をかつて率いた嶋崎久美さんに、今大会の意義を尋ねる機会があった。「集大成の舞台があれば、将来振り返ることができる」と嶋崎さんは即答した。「努力したことは一生無駄にならないし、一人ひとりの思い出は永久に消えない」とも続けた。
 たゆまぬ努力の結晶が、今年の夏に本来望んでいた形になることはかなわなかった。それを受け入れながら、最後の一秒まで誇り高く戦ったすべての高校球児たちに、誠に僭越(せんえつ)ながら、心からの敬意を表したい。

(朝日新聞秋田版 2020年08月15日掲載)

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