あいたいAAB

新岡 智昭

海外かぶれ 何が悪い

「あと1分45秒で電車が到着します」。先月、夏休みに訪れたスペイン・バルセロナの地下鉄のプラットホームで目にした電光掲示板の表示である。1秒ずつカウントダウンされる光景を眺めていると、本当に時間通りにやってきたので驚いた。鉄道ダイヤの正確さに感心する外国人、という姿は日本のみのステレオタイプだと思っていたのに、見事にその逆を演じてしまった格好だ。

眼前にそびえ立つ建築中の世界遺産「サグラダ・ファミリア」や、名門サッカーチーム「FCバルセロナ」の本拠地に足を踏み入れた瞬間の感動は言うまでもないが、その前段階、何げない日常までもが海外旅行初心者の私にはいちいち新鮮に映り、楽しくて仕方がない。宿泊先の民泊や飲食店で、付け焼き刃のスペイン語が通用しないこともしばしばあるが、そんなネガティブな出来事すら、愉快な非日常として捉えることができる。

今ではすっかり海外に「かぶれている」私だが、初めて日本を出たのは大学の卒業旅行。それまでは外国に行って浮かれている人を何となく否定していた。なんと恥ずべき、もったいないことだろう!その経験は日々に劇的な変化をもたらさずとも、刺激的なエッセンスを与えてくれるというのに……。

(朝日新聞秋田版 2019年10月09日掲載)

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