あいたいAAB

新岡 智昭

写真に思うキューバ

家で過ごす時間が激増している。決して本意ではないが、仕方がないと思わざるを得ないご時世。フラストレーションを解消するため、これまでに撮影した写真を見返して追憶にふけっている。

中南米の島国・キューバを3年前に訪れた。18世紀に造られたコロニアル様式の建物が並び、色とりどりのクラシックカーが走る素敵な街だ。首都・ハバナの旧市街で詐欺に遭ったことがある。良い店を知っているから行こうと声を掛け、飲食代をおごらされるという手口で、その存在は知っていた。だから私は「観光客が入れないような店に行きたい」と興味本位で頼んでみた。

真偽のほどは定かではないが、案内された店は怪しげな路地裏の中にあり、他の客は明らかに好奇の目を向けていたので良しとしよう。彼は私の金でビールを飲みながら、私が撮った写真を見たいと言い出した。私は賛辞の意を込めて見せたのだが、彼は「ハバナの一部分しか見ていない」と不機嫌そうだった。

今にも崩落しそうな家で暮らす人々、ゴミのたまり場、深夜の旧市街を闊歩(かっぽ)する野良犬……結果としてそういう写真がアルバムの後半には収められている。美しい思い出だ。いつか再訪したら、彼に「君の話が日本の新聞に載った」と伝えてみようかな。

(朝日新聞秋田版 2020年05月16日掲載)

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