社長ブログ

2021/04/09

「なまはげ」は地域防災のど真ん中 | 桜井 元

 10年前の震災当時、仙台のテレビ朝日系列局・東日本放送(KHB)で夕方のニュースを読んでいたアナウンサー奥村奈津美さんが、「子どもの命と未来を守る!――『防災』新常識」(辰巳出版)を出版した。表紙に「パパ、ママができる!水害・地震への備え」「妊娠・出産したら読む防災の本!」とうたわれているように、どうしたら子どもたちの命を守れるか、避難中の母子の栄養状態にどう配慮すればよいかなど、専門家へのインタビューや分かりやすいイラストを通して、具体的に描かれている。

 

 奥村さんは2011年3月11日午後2時46分、仙台市内の自宅マンション(7階)でひとり台所に立っていた。午前中、沿岸部の畑で取材し、そこで収穫した野菜を自宅で調理してから、KHBのスタジオで撮影する予定だった。揺れ始めて火を止めた直後、大きな揺れとなって約30㌔のオーブンレンジが飛んだ。外へ逃げようとドアを開けたら、マンションから振り落とされそうに感じてドアノブを握りしめた。「人生で初めて死の恐怖を感じました」と振り返っている。

 KHBに着いた奥村さんは、72時間の緊急放送のアナウンスを担当。「仙台市〇〇で、約200体のご遺体が見つかったという情報があります」「いま分かっている行方不明の方のお名前を五十音順にすべて読み上げます」――マイクに向かい続けた。

 「この世のこととは思えない被害状況を、全国の人に向けて、助けを求める気持ちで伝え続けましたが、正直、今も無力さと悔しい気持ちが残っています」と書いている。

 

 これが「原点」となり、ほどなくNHK広島放送局へ移ったあとも、視聴者に呼びかけてラジオを集め、被災地へ届けるなど、支援活動を続けた。東京へ戻ってフリーとなってからも、TBSの「はなまるリポーター」やNHKラジオのアナウンサーを続けながら、被災地の人たちの思いを大切にしてきた。防災士、福祉防災認定コーチの資格をとり、熊本地震直後の現場も訪ねている。

 

 子どもを寝かしつけてから、原稿を書き続けた「『防災』新常識」では、妊娠中の避難のため備えておくべき品物を紹介。赤ちゃんを連れた避難では「パパ・ママは警戒レベル3で避難です」「ストレスで母乳が出なくなる、は誤解」「非常持ち出し袋には紙コップ、割りばし、粉ミルクを3日分入れておこう」、子どもが歩けるようになったら「子どもと防災散歩しよう」などと母親の視点から具体的に呼びかけている。

 コロナ禍で、ソーシャルディスタンスを取らなくてはならず、分散避難が呼びかけられている現状では、避難先は自治体指定の避難所に限らず、「自宅、親戚・友人宅、ホテルなども含まれる。何より子どもにとって安全な場所に避難することが大事」と指摘している。

 

 「障がい児を災害から守るためにできること」では、男鹿市生まれの跡見学園女子大学教授で福祉防災コミュニティ協会代表理事の鍵屋一さんにインタビュー。鍵屋さんは次のように「なまはげ」の役割を強調している。

 なまはげは大みそかの夜に、子どものいる家にやってきて、「泣く子はいねぇか」「親の言うことを聞かねぇ悪い子はいねぇか」と2匹で20軒ぐらい回って歩くんです。家の中に入ると「じいさん、だいぶ年取ってきたな」とか、「この子は障がいがあるから大変だな」とか、一人で逃げられない人がいることが分かってくるわけです。なまはげは、地域の模範的な若い衆がやっていて、男鹿の場合だと、消防団にも入っています。災害の時は、その消防団が助けに来るということです。そして、逃げる先が神社になっていて、なまはげが参道をきれいに整備する。これが避難路になるわけです。なまはげという行事で、子どもを戒めに行って、盛り上げるんですけど、災害になったら、支援者となって、自分ひとりで逃げられない人を避難路を使って避難場所まで逃がす。地域防災のど真ん中をなまはげはやってるんですね。

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