20170224.jpg 25日午後4時から放送の「KAMAITACHI ハサの記憶」でディレクターを務めた。写真集「鎌鼬(かまいたち)」(1969年刊)をめぐる芸術家たちの足跡と、撮影の舞台となった羽後町田代の人々の記憶をたどる番組だ。

 舞踏家土方巽(たつみ)と写真家細江英公が撮影のため田代を訪れたのは1965年の9月のことだった。2人は目の前に広がる田園風景に大いに触発され、その時撮影された作品は今や世界的に知られる「鎌鼬」の主柱と言ってよいだろう。

 それから51年後の去年10月、田代にその作品を展示する鎌鼬美術館が誕生した。(冬季休館中)。それを実現させたのは田代地区のNPO鎌鼬の会だった。細江氏が何十年もの間熱望していた夢を、田代の人々がかなえたのである。

 そして田代には、昔ながらのハサ掛けや、人が暮らす茅葺(かやぶ)き民家がいまだに残る。更に、美術館が入る旧長谷山邸も明治の建築だ。そこには、人々が長い間紡いできた悠久のドラマが宿っている。

 美術館を訪れたら、周辺の散策をお勧めする。今も変わらず、土方と細江を触発した風景が確かに存在している。

 秋田の農村風景が著しく失われていく中、鎌鼬美術館が田代に開館した意義は大きい。そこにあり続けるものの価値を十分に教えてくれるからだ。田代は今、「鎌鼬」の世界観を体感できる一つの作品として存在している。


(朝日新聞秋田版 2017年2月24日掲載)