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裏方が表に出る理由は

1月末、アルヴェで番組の公開生放送があり、人気のコント三人組「ハナコ」が、ゲストとして登場した。メンバーの1人が秋田出身で、番組や私のことも知っていて、「サタナビっ!でコントやったよ!スゲー」などと盛り上がってくれたのだが、他の2人はもちろん地方の番組のことなど知る由もなく、この温度差が面白かった。実は今回、同じ舞台上で斜め後ろからコントを見るという不思議な経験をした。ただ「見ている姿」を客席から見られていたわけで、考えてみると、ちょっと変じゃない?

先日、20年ぶりに東京で一緒に舞台の仕事をしていた仲間と話す機会があった。皆、私が秋田でテレビに出ていることを知ったらしく「芸能人と話をするのは初めてでー」などと口々に言う。当時、多くの俳優やスタッフと仕事をしていたのに!つまり、裏方の一人だった私が、今なぜか「出役」に回っていることを激しくちゃかされたのだ。まあ、もっともだ。私だって立場が違えばきっとそうする。

裏側の人間が表側に出るのにはそれなりの理由があるはずなのだ。でなければ、単に裏側の仕事の才能に欠けていたか、ただの出たがりか、上役の悪趣味か。まあ何にせよ、あまり褒められたもんではない。さて、私には「出る」理由があったっけ……?

(朝日新聞秋田版 2019年02月20日掲載)

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長い車旅 降りて上機嫌

年末年始に家族で富山と岐阜に行って来た。往復1400キロ。滅多にしないロングドライブだった。運転手は私1人。普段通らない道を走るのは嫌いではないのでそれなりに楽しんだが、同乗者たちが「揺れる」だの「足がむくむ」だの「緊張する」だの、不平を口にするのにはいささか閉口した。

でもまあ、それも仕方ないことで、何しろそんな長旅は十数年ぶりなのだ。ハンドルを握っている私は積極的に車の操作をし続けているわけだが、同乗者はただひたすら座っているだけなのだから。

若い頃、東京から富士山のふもとまで仲間とドライブした。車内はなぜだかずーっと盛り上がり、ほとんど誰かしらしゃべり続けていた。そうしていなければならない年頃だったのだと思う。ウチの場合、後部座席の子どもたちは勝手にしゃべってお菓子を食べて、寝る。助手席の妻とは、眠気防止に目的地の話なんかをぽつりぽつりするくらいだった。

まあ、そんなものだろう。鶴岡、富山、高岡、高山、新潟と巡ったが、高岡以外は家族では初めての場所ばかりで、車を降りさえすればすぐに皆、上機嫌になるのがよかった。「知らない場所を楽しめる人たちでよかった」と、つくづく思う。でも、しばらくはドライブ嫌がるだろうなあ……。

(朝日新聞秋田版 2019年01月16日掲載)

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頼もしや18歳の新風

今月から番組に新しいメンバーが加わった。澤井優香さん。潟上市出身のなんと18歳。うちの娘とひとつしか違わない。聞けば両親は私より10歳以上も若いと言う。さすがに長く番組を続けるとこーゆーことも起こる。これで、サタナビっ!のメンバーはほとんど家族みたいな構成になった。10代から50代まで勢ぞろいだ。私の頼りない記憶だと、出演者で一番若かったのは23歳くらいだったはずで、未成年が出演するのはたぶん初めてだ。まさに新しい風。

ただ若いから、ということではなく、若い人が入ったことで周りのバランス、立ち振る舞い方が自然に変わる、変わらざるを得ない、ということが大きい。番組放送開始16年目にして、色んな意味でフレッシュさが加わった。

彼女は地元のアイドルとして長く活動し、それを卒業しての出演である。つまり、私よりも生のステージ、現場の経験が豊富。しかもグループでの活動だったので、周りとの関係性にも気を配れる。お客を意識した行動や発言についてもある程度わかっている。その辺りはしっかりしていて頼もしい。

澤井さんは出演2回目で早くも安心感を醸し出していた。これからが楽しみである。それにひきかえ、俺の18歳のころってば……。

(朝日新聞秋田版 2018年12月19日掲載)

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友川ライブ 子にいい経験

秋の初めに秋田市内で友川カズキのライブがあり、子どもを連れて行った。中高生にはどうかとも思ったが、自分もその頃「友川」を聴いていたし、好みはどうあれ、音楽を生のステージで聴くのは良い経験だろうという夫婦の結論になったわけだ。

小さなライブハウスの中で、酒を片手にした大人たちに囲まれて、未成年者は見事にうちの子どもたちだけ。そんな中で彼らがどう時間を過ごしたか、本当のところはわからないが、私たち大人は、笑いと静かな怒りのステージを十分に楽しんだ。

曲と合間のしゃべりの落差がすごいのだ。実は中身はつながっているのだが、しゃべりでは笑わせ、歌では胸をつく。9月であったが、友川さんは「いまだに金農に胸ぐらをつかまれている」と言って、「くりかえし金農の話題になってしまう自分が今一番欲しいのは金農の卒業証書だ!」と観客を笑わせる。一方で本や自分の生活、この国の今に対する憤りなど、とても今時のテレビでは聞くことのないような言葉や歌で、観客の胸ぐらをつかんでいた。

友川さん自身は反面教師などと言っていたが、子どもたちが観客の笑い声にひるまず注意深くその言葉と歌を聞いていたなら、それこそいい経験になったはずだ、と親としては希望的観測をしている。

(朝日新聞秋田版 2018年11月14日掲載)

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楽せず変化 16年目も

今月は「サタナビっ!」放送開始15周年ということで、視聴者のみなさんに普段より豪華なプレゼントを用意しつつも、ほぼいつも通りに番組をお送りしている。節目節目にはちょっとだけそれらしいことをするが、これには「むち」の意味合いもある。

「それ行け、ここからだ!もっと走れ!」。第4コーナーを回って最後の直線の、あの感じ。1年走って、やっと前の年と同じくらいのことができる。漫然と「去年と変わらんし」「前にやったものをまた」「同じ仲間で同じ調子で」なんて楽をしようとすると、すぐに見透かされてしまう。怖い怖い。

世の中の「続いているもの」の多くは劣化する。昔から「名家三代」とか「売り家と唐様で書く三代目」なんて言葉もあるくらいだ。長年続く老舗の味も、実は少しずつ時代の変化と共に変わっているのだ(ちなみに、サタナビっ!オリジナルブレンドコーヒーも変わってます!)。

歌舞伎も100年前と今とでは変わっているのだけれど、その魅力は変わらず続いている。同じものをただなぞっていては続かないのだ。番組を、老舗や歌舞伎と一緒にして語るつもりはないけれど、「続くってのは結構大変なことなのだなあ」と、改めて思っている16年目。

(朝日新聞秋田版 2018年10月17日掲載)

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