あいたいAAB

新岡 智昭

筋書きないドラマ実況

「野球は筋書きのないドラマ」。大洋(現DeNA)を初の日本一に導いた三原脩さんの名言である。しかし、それはプロ野球に限らず、高校野球100年の歴史の中でも幾度となく証明されてきた。

筋書きがないとはいえ、中継に携わる私たちが何も考えないわけではない。日本代表戦などと異なり公平を期すことが大前提だが、試合展開によっては同じシーンであっても「得点したい」になることもあれば「しのぎたい」になることもある。ひとごとだ、と怒られそうだが、ドラマが生まれることを期待して画作りしたりコメントしたりしているのだ。

夏の秋田大会決勝。4点を追う明桜が八回表に1点を返し、なおも2死満塁。打席には今大会無安打の代打・土居涼太選手。彼の表情、彼に声を掛ける加藤洋平主将の表情を見て、何かが起こりそうな予感がした。カメラは土居選手のアップ、「3点差です!2アウトです!満塁です!」と盛り上げた。その直後、打球はセンターを越え、明桜が一時同点に追いついたのだった。 

初の決勝戦実況、拙劣で至らないことも多かったが、高校球児が巻き起こすドラマを目の当たりにできて光栄だった。次は秋田大会の激闘を制した秋田中央の甲子園での活躍に期待したい。

(朝日新聞秋田版 2019年08月07日掲載)

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