あいたいAAB

新岡 智昭

夢を諦めないのも才能

6年前、就活生だった。アナウンサーを志し、全国津々浦々、放送局の採用試験に毎日のように赴いた。しかし30社以上受けても内定は出ない。居酒屋のアルバイトでためたお金は、交通費や宿泊費で底をついた。試験を終えて汗だくで帰る夕暮れ時、「やっぱり才能がないのかな、諦めようか」。ついネガティブ思考に陥る自分が嫌だった。

放送作家・鈴木おさむさんの「芸人交換日記~イエローハーツの物語~」(太田出版)に出会ったのはその頃。結成11年目を迎えてもなかなか売れないお笑いコンビの話だ。物語の終盤、登場人物の言葉が心に突き刺さる。「夢を諦めるのも才能だ」と。

苦しい状況から救ってくれる、ありがたい言葉にも思えた。だが同時に悔しさも増した。数日間この言葉と格闘し、「逆に夢を諦めないのも才能だろう」と開き直ることで頑張れた。

夏の高校野球秋田大会で、初めて野球の実況を担当した。球児にとっては、甲子園という夢をめざす舞台。小学5年の頃、テレビのプロ野球実況に憧れたのがきっかけでアナウンサーを志した私にとっては、一つ大きな夢がかなったことになる。至らないことばかりだったが、第100回大会という節目に携われて幸せだった。夢を諦めなくて良かった。

(朝日新聞秋田版 2018年08月08日掲載)

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